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生存確認用写メ日記
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真壁華夜がその日・その時感じたことや考えたことの整理或いは備忘録的に使われることもあれば萌えメモとして使われることもあるし、日常の愚痴をこぼしていることもあるかと思います。基本的に偏屈な管理人sが綴っているのでその辺を許容できる人向け。反感買いそうなものは裏日記に書くようにしています。
2010/05/29 (Sat)
00:49:54
「――…ない」
冷や汗が背中を伝い落ちる。
部屋中を探してなお発見出来ない遺失物の存在に、堂島の表情は少し蒼くなった。
不味い。
この事態は非常に不味い。
もう一度、探すために散らかした部屋を片付けながら探してみるが矢張り何処にもなかった。
「真逆、留守中訪れた部下に見付からぬよう持ち出した際に何処かで落としでもしたか……?」
口にすると愈愈寒くなってきた。
もしあの男に発見されでもしたら、その後どんな報復に遭うか感がるのも恐ろしい。
「まだ間に合うかも知れん」
何しろ此処は武蔵野の森の奥深く。
帝国陸軍が秘密裏に築いた――第十二特別研究所。
其の場所を知る存在も極僅かなら、訪れる者は更に少ない。万一道中で落としたとしても、気付かれずに放置されている可能性は十分ある。
慌てて部屋を飛び出すと、此処に向かっていた人物と衝突しそうになった。
「気を付けろ!」
怒鳴りつけるとしかし、
「すみません、間が悪かったようで」
と、怯んだ様子もなく落ち着いた声が申し訳なさそうに詫びを口にした。
「ん? 何だ、お前か美馬坂」
この研究所の所長として研究に勤しむ学者然とした男は滅多なことでは表情を変えない。
あの遺失物を拾得したのがこの男なら、何食わぬ顔で保管しているだろうと思い至ると少し焦りが鎮まった。
「美馬坂」
「何か?」
「う、上から照会があったのだが……」
防衛線を張って探りを入れる。
若し万一中身を見られていたとして、持ち主が自分だとバレるのは例え相手がこの男でも不味い。この男は何事もにも頓着しないが故に、最も知られてはならない相手に訪ねられたらあっさり口を割ることが予想される。悪意なくされる好意ほど、発覚した時のダメージは計り知れないものだ。
「遺失物の拾得情報はないか?」
「遺失物…ですか? 所内では見掛けていませんが――何か、探し物ですか?」
「いや、確認だ。無いなら良い」
「そうですか」
届いていないということか。
或いは――気付かれていないだけか。
「私に用か?」
「いえ、お急ぎなら後で結構です」
「すまんな」
慌てた様子で研究所後にする。
何時も通る道を、彼方此方に注意深く視線を遣りながら引き返した。
しかし、何も見つかりは出来ない。
引き返す道中も同じように探し回ったが塵芥一つ落ちていなかった。
奇妙しい。
ならば一体何処にあるというのだ。
研究所に戻ると、今このタイミングで遭遇するには危険過ぎる人物と鉢合わせた。
露骨に嫌そうな顔をされ、それでも律儀に「お久し振りです」と棒読みの挨拶を寄越してくる。
「何か、不都合でも起きましたか?」
「な…何故そう思うのだ」
「落ち着きの無い視線、汗をかくほど何かを探し回った様子を見れば、僕がどんなに彼方に無関心でも平静ではないことくらいは判ります」
相変わらず、この男の物云いには遠慮というものが無い。
「差し詰め重要書類の類でも紛失なさって探し回ってきた――というところですか?」
カマを掛けられているのではあるまいな。
そう思わせるほど核心に迫る発言に内心ドキッとする。
「いや……」
待てよ。
この男の性格から、無頓着であるが故に遺失物も見かけたまま放置している可能性があるのではないかと堂島は考える。もしくは、遺失物に気付いて拾得しても、興味さえ示さずそのまま何処かに保管しているという可能性もあるかもしれない。
「中禅寺、念の為尋くが――」
「何か?」
「この近辺で帳面の拾い物をしなかったか? 或いはしたという話を聞いた覚えはないか?」
「いいえ、何も。奇妙しなことをお尋ねになりますね」
「そうか…なら良い」
「それでは」
不機嫌そうに踵を返す後姿を暫く呆けたように眺め遣って、もう一度この建物の周辺を探す必要があるかと建物を出る。
ぐるりと外周を歩き回り、裏手の焼却炉にたどり着く。
「――…ん?」
其処で、堂島が見たものは。
「これは……」
表情が凍る。
煙突から吹き上げられた燃え滓の一部。
見覚えのある小豆色の――紙切れ。
端は黒く焦げている。
既に、手遅れだったらしい。
恐らく手を下したのであろう相手に、真相を慥かめることは性質上――出来ない。
中を見られたのか如何かだけでも知りたいところではあったが、それも出来る類の代物ではない。
途方に暮れた堂島は、暫くそのまま焼却炉の前で固まっていた。
日の短くなった秋空を過ぎる烏が一羽、追い討ちを掛けるように「阿呆」と二回繰り返し――鳴いた。
(了)
備考>昨年のスパークでの無配本。直前に開催されたオンリの無配本の続き。ペーパのオマケです。スパーク…真逆京極一人きりだと思いませんでしたorz
冷や汗が背中を伝い落ちる。
部屋中を探してなお発見出来ない遺失物の存在に、堂島の表情は少し蒼くなった。
不味い。
この事態は非常に不味い。
もう一度、探すために散らかした部屋を片付けながら探してみるが矢張り何処にもなかった。
「真逆、留守中訪れた部下に見付からぬよう持ち出した際に何処かで落としでもしたか……?」
口にすると愈愈寒くなってきた。
もしあの男に発見されでもしたら、その後どんな報復に遭うか感がるのも恐ろしい。
「まだ間に合うかも知れん」
何しろ此処は武蔵野の森の奥深く。
帝国陸軍が秘密裏に築いた――第十二特別研究所。
其の場所を知る存在も極僅かなら、訪れる者は更に少ない。万一道中で落としたとしても、気付かれずに放置されている可能性は十分ある。
慌てて部屋を飛び出すと、此処に向かっていた人物と衝突しそうになった。
「気を付けろ!」
怒鳴りつけるとしかし、
「すみません、間が悪かったようで」
と、怯んだ様子もなく落ち着いた声が申し訳なさそうに詫びを口にした。
「ん? 何だ、お前か美馬坂」
この研究所の所長として研究に勤しむ学者然とした男は滅多なことでは表情を変えない。
あの遺失物を拾得したのがこの男なら、何食わぬ顔で保管しているだろうと思い至ると少し焦りが鎮まった。
「美馬坂」
「何か?」
「う、上から照会があったのだが……」
防衛線を張って探りを入れる。
若し万一中身を見られていたとして、持ち主が自分だとバレるのは例え相手がこの男でも不味い。この男は何事もにも頓着しないが故に、最も知られてはならない相手に訪ねられたらあっさり口を割ることが予想される。悪意なくされる好意ほど、発覚した時のダメージは計り知れないものだ。
「遺失物の拾得情報はないか?」
「遺失物…ですか? 所内では見掛けていませんが――何か、探し物ですか?」
「いや、確認だ。無いなら良い」
「そうですか」
届いていないということか。
或いは――気付かれていないだけか。
「私に用か?」
「いえ、お急ぎなら後で結構です」
「すまんな」
慌てた様子で研究所後にする。
何時も通る道を、彼方此方に注意深く視線を遣りながら引き返した。
しかし、何も見つかりは出来ない。
引き返す道中も同じように探し回ったが塵芥一つ落ちていなかった。
奇妙しい。
ならば一体何処にあるというのだ。
研究所に戻ると、今このタイミングで遭遇するには危険過ぎる人物と鉢合わせた。
露骨に嫌そうな顔をされ、それでも律儀に「お久し振りです」と棒読みの挨拶を寄越してくる。
「何か、不都合でも起きましたか?」
「な…何故そう思うのだ」
「落ち着きの無い視線、汗をかくほど何かを探し回った様子を見れば、僕がどんなに彼方に無関心でも平静ではないことくらいは判ります」
相変わらず、この男の物云いには遠慮というものが無い。
「差し詰め重要書類の類でも紛失なさって探し回ってきた――というところですか?」
カマを掛けられているのではあるまいな。
そう思わせるほど核心に迫る発言に内心ドキッとする。
「いや……」
待てよ。
この男の性格から、無頓着であるが故に遺失物も見かけたまま放置している可能性があるのではないかと堂島は考える。もしくは、遺失物に気付いて拾得しても、興味さえ示さずそのまま何処かに保管しているという可能性もあるかもしれない。
「中禅寺、念の為尋くが――」
「何か?」
「この近辺で帳面の拾い物をしなかったか? 或いはしたという話を聞いた覚えはないか?」
「いいえ、何も。奇妙しなことをお尋ねになりますね」
「そうか…なら良い」
「それでは」
不機嫌そうに踵を返す後姿を暫く呆けたように眺め遣って、もう一度この建物の周辺を探す必要があるかと建物を出る。
ぐるりと外周を歩き回り、裏手の焼却炉にたどり着く。
「――…ん?」
其処で、堂島が見たものは。
「これは……」
表情が凍る。
煙突から吹き上げられた燃え滓の一部。
見覚えのある小豆色の――紙切れ。
端は黒く焦げている。
既に、手遅れだったらしい。
恐らく手を下したのであろう相手に、真相を慥かめることは性質上――出来ない。
中を見られたのか如何かだけでも知りたいところではあったが、それも出来る類の代物ではない。
途方に暮れた堂島は、暫くそのまま焼却炉の前で固まっていた。
日の短くなった秋空を過ぎる烏が一羽、追い討ちを掛けるように「阿呆」と二回繰り返し――鳴いた。
(了)
備考>昨年のスパークでの無配本。直前に開催されたオンリの無配本の続き。ペーパのオマケです。スパーク…真逆京極一人きりだと思いませんでしたorz
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