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真壁華夜がその日・その時感じたことや考えたことの整理或いは備忘録的に使われることもあれば萌えメモとして使われることもあるし、日常の愚痴をこぼしていることもあるかと思います。基本的に偏屈な管理人sが綴っているのでその辺を許容できる人向け。反感買いそうなものは裏日記に書くようにしています。
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2010/05/29 (Sat) 00:46:46
 伊豆の事件からどれほどの歳月が流れただろうか。
 二人の男はまた、対峙し睨み合っている。
「また、私の邪魔をするか? 中禅寺よ」
 互いに出方を窺って硬直状態が続いた中、一方が口許に不適な笑みを浮かべて沈黙を破った。
「彼方こそ――一体何時まで僕を振り回すお心算ですか? 大佐」
 言葉の応酬。
 淡淡と、何時もと変わらない表情に見えて――その実、幾つもの棘を内包したそれは見ている者達に緊張を伝える。
「今度こそ、築地の男も愛想を尽かすのではないか?」
 その言葉に、中禅寺の眉が僅かに反応を見せた。
「図星か」
「……彼方に、何の関係が?」
「貴様はもう少し賢い人間だと思っていたが…如何やら、私の買い被り過ぎだったようだな」
 一陣の風が、中禅寺の式服をはためかせた。
 漆黒の着流し。清明桔梗を染め抜いた、式服。
「如何とでも仰って下さい。私自身、嫌気が差しているのですから」
「ほう…なら放っておけば良い」
「そう、出来たら良かったと――私も、思いますよ」
 苦い顔をして吐き捨てる。
 緊張を増す空気に、居合わせた者達が固唾を呑んだ。
 今回も、中禅寺は最後まで躊躇っていた。
 道を、示してもらうべく明石を訪れもしたが、前回同様に介入を否定された。介入するような愚行に出るなら今度こそ縁を切ると脅されもした。
 それでも――放っておけずにこうして此処まで来てしまった。
 付き纏う過去。
 忘れたい時間。
 如何して、自分を放っておいてくれないのだろう。
 葛藤を、握り潰そうとでもするかのように手に力を込める。
「強がるな。貴様の脆さをこの私が忘れたとでも思っているのか?」
「貴様……!」
「榎さん」
 静かな、ひどく静かな声に静止されて男は言葉を飲み込んだ。
「反応してはいけない。それでは、あの男の思う壺です」
 解っていた。
 あの、伊豆での再会から。
 蓋をしていた過去を紐解かれてから、ずっと。
 この日までの空白は、だから、覚悟を決めるまでの猶予。
「解らんな」
「……何が、ですか?」
「其処まで解っていながら貴様が私の邪魔をする理由だ」
 自重するように、中禅寺は笑みを見せる。
「そんなもの――僕が知りたいくらいですよ」
 気に入らない。
 ただ、そんな些細なことなのかもしれない。
「彼方には退屈なだけかもしれませんがね、堂島さん」
 目を閉じて思い出す。
 失くしたのだと思った人。
 今は、手の届くところにいる。
「僕はこの、平穏な日常を気に入っているんですよ」
「下らんな」
「彼方の価値観に興味はありません」
「云うようになったではないか」
「強いて理由を挙げるなら――そうですね、彼方が気に入らない。それだけですよ」
「面白い。矢張り、こうなる宿命だったようだな」中禅寺。
 勝ち誇ったように哂う男。
「そうですね」
 深い溜息。
「彼方を倒さなければ、僕は進めないようですので」
 忌忌しいこの因縁を断ち切るべく。
「僕は、僕の平穏のために僕の持てる総ての言葉で彼方の総てを否定します」
「それも良かろう」
 余裕を見せ付けるような笑み。
 そして始まる言葉による攻防。
 聞いている者の価値観を揺るがして、不安を煽り焦燥を煽る。

 ――…そこへ。
 
 駆け寄る跫。
 堂島の側に付いていた男が、揺さぶられた価値観に過剰反応して二人の間に割り込んだ。
「中禅寺!」
 その手には、刃物の煌きがあって。
 己の――堂島によって刷り込まれた堂島の価値観を――否定し続ける男に向けられた憎悪の行動。
 止めるには、榎木津の位置から陰陽師の位置は遠過ぎた。

 衝撃。

 けれど、それは刃物によるものではない。
 突き飛ばされ、地面に衝突したことによるもの。
 自分を庇った存在が信じられず中禅寺はただ呆然と目を見開く。
「大…佐……?」
「意外か? しかし、お前は今死ぬべきではない」
「如何して」
「貴様を試したいたがために仕組んでは見たが…使えん男が紛れ込んでいたようだな。これでは、折角の舞台が台無しだ」
 堂島を刺した男はその場にへたり込み、自分の行為に自我を失う寸前の様相を呈していた。
「愚か者が」
 その男の首に手を伸ばし、堂島は一瞬にして男の気を失わせる。
「中禅寺」
 肩越しに振り返ったその顔は、蒼白めいているが不敵でもあった。
「この命、貴様に呉れてやろう」
「……大…佐?」
「証明してみるが良い。貴様の正しさをな」
「大佐!」
 意識を失い倒れた男を、憎んでいたはずなのに中禅寺は抱え起こす。
「      」
 掠れた声で紡がれた最期の言葉に中禅寺は耳を疑った。
「これからも、私は…彼方が世界で一番嫌いですよ。大佐」
 そう紡がれた応えはしかし、堂島の耳に届くことはなかった。 
  
 
<続>

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