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生存確認用写メ日記
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真壁華夜がその日・その時感じたことや考えたことの整理或いは備忘録的に使われることもあれば萌えメモとして使われることもあるし、日常の愚痴をこぼしていることもあるかと思います。基本的に偏屈な管理人sが綴っているのでその辺を許容できる人向け。反感買いそうなものは裏日記に書くようにしています。
2010/05/29 (Sat)
00:45:51
鬱蒼と木木の生い茂る、武蔵野の森の奥深く。
帝国陸軍が極秘裏に設立した、研究所の一つが其処にある。
使い走りにされるのは末端の宿命。
或る資料を受け取るため、郷嶋はその日遥遥この帝国陸軍第十二研究所まで遣って来た。
その道中。
「――…何だ?」
ふと視線を投げた先、目に付いたのは遺失物らしい長方形の物体。
距離が縮まるとそれが帳面の類であることが判った。
「こんなことを態態書くとは無用心だな」
表紙には『極秘』の文字。
偸閑に不審なシロモノでもある。
「機密事項であることを宣言しておいて、拾われた時に相手が中を改めないとでも思っているならお笑い種だな。それにしても何でこの表紙はこんな色してやがるんだ……?」
赤に属する色ならば、日の丸を意識してのことだと察することも出来る。
しかしこれはそういった、赤や朱や深紅といった色よりもっとくすんでいる。それらの色が褪せたのとも違うようだ。
頭の中で何か嫌なものと一瞬繋がったような気もするが、明瞭としたカタチにならない。
「無用心だな、まったく」
この道を通る人間は限られている。向かう先に届けておけばとりあえず問題無いはずだ。
郷嶋は一つ溜息を吐いて遺失物を回収すると、そのまま暫く歩き続けて目的地――帝国陸軍第十二研究所に辿り着いた。
相変わらず、建物に対して人の気配が稀薄な場所だ。
低く呻る機械音に耳が奇妙しくなってくる。
慣れた足取りで階を上り、とりあえず――二階で面識の或る人間を探した。二階に着くと機械音は少しだけマシになる。慣れてしまうのかもしれないし、階が違う所為で音が気にならないくらいの大きさになってるのかもしれないがどちらなのか未だに判らない。
物音一つ聞こえて来ないこの場所で、自身の跫はやけに響いた。
耳聡いあの男がそれに気付くことを期待して、彼はある部屋に足を向ける。
ドアが軋む音が跫に混じって聞こえて来た。
「……君か」
自分の姿を認めるなり、無遠慮に迷惑そうな顔をする。
「相変わらず今日も仏頂面だな、あんた」
「何の用だい?」
「山辺さんの使い走りさ。例の資料をもらって来いってな」
「それなら美馬坂さんのところに行ってくれないか。僕は預かっていない」
「後は――これだ」
脇に抱えていた遺失物を手に持ち直して見せた。
「来る途中で拾ったんだが…どうせ此処の関係者のものだろう?」
そう云うと、常に不機嫌な顔をしているその男の表情が更に渋面になった。
「君は…まったく」
呆れたと云わんばかりの声で言葉を濁す。
「何だよ」
「そんなものを態態拾って届けるなんて酔狂としか云いようが無い」
「――如何いう意味だ」
「人が好いにも程があるよ」
溜息を吐いて、引っ手繰るように差し出した帳面を郷嶋から奪うと表紙の一点を指で叩いて視線を求めた。
「こんなに判りやすい遺失物もないと思うんだが」
指先を注視してみると、そこに。
「気付くかよ、そんなもの」
「気付かない方が如何かしているよ」
指先には黒い六芒星。そしてその中心には『堂』の文字。
「呆れてものが云えないね」
「一体あの人は何を考えてるんだ?」
「下らないことだろうね、きっと」
云いながら、極秘と書かれたその帳面を躊躇無く開いて目を通した。
「君以上に呆れてものが云えない代物だな」
不愉快そうにまた新しい溜息を重ねた男の手元を郷嶋も覗き込む。
ざっと目を通して郷嶋は、その男の言葉の正しさを知ることとなった。
<続>
帝国陸軍が極秘裏に設立した、研究所の一つが其処にある。
使い走りにされるのは末端の宿命。
或る資料を受け取るため、郷嶋はその日遥遥この帝国陸軍第十二研究所まで遣って来た。
その道中。
「――…何だ?」
ふと視線を投げた先、目に付いたのは遺失物らしい長方形の物体。
距離が縮まるとそれが帳面の類であることが判った。
「こんなことを態態書くとは無用心だな」
表紙には『極秘』の文字。
偸閑に不審なシロモノでもある。
「機密事項であることを宣言しておいて、拾われた時に相手が中を改めないとでも思っているならお笑い種だな。それにしても何でこの表紙はこんな色してやがるんだ……?」
赤に属する色ならば、日の丸を意識してのことだと察することも出来る。
しかしこれはそういった、赤や朱や深紅といった色よりもっとくすんでいる。それらの色が褪せたのとも違うようだ。
頭の中で何か嫌なものと一瞬繋がったような気もするが、明瞭としたカタチにならない。
「無用心だな、まったく」
この道を通る人間は限られている。向かう先に届けておけばとりあえず問題無いはずだ。
郷嶋は一つ溜息を吐いて遺失物を回収すると、そのまま暫く歩き続けて目的地――帝国陸軍第十二研究所に辿り着いた。
相変わらず、建物に対して人の気配が稀薄な場所だ。
低く呻る機械音に耳が奇妙しくなってくる。
慣れた足取りで階を上り、とりあえず――二階で面識の或る人間を探した。二階に着くと機械音は少しだけマシになる。慣れてしまうのかもしれないし、階が違う所為で音が気にならないくらいの大きさになってるのかもしれないがどちらなのか未だに判らない。
物音一つ聞こえて来ないこの場所で、自身の跫はやけに響いた。
耳聡いあの男がそれに気付くことを期待して、彼はある部屋に足を向ける。
ドアが軋む音が跫に混じって聞こえて来た。
「……君か」
自分の姿を認めるなり、無遠慮に迷惑そうな顔をする。
「相変わらず今日も仏頂面だな、あんた」
「何の用だい?」
「山辺さんの使い走りさ。例の資料をもらって来いってな」
「それなら美馬坂さんのところに行ってくれないか。僕は預かっていない」
「後は――これだ」
脇に抱えていた遺失物を手に持ち直して見せた。
「来る途中で拾ったんだが…どうせ此処の関係者のものだろう?」
そう云うと、常に不機嫌な顔をしているその男の表情が更に渋面になった。
「君は…まったく」
呆れたと云わんばかりの声で言葉を濁す。
「何だよ」
「そんなものを態態拾って届けるなんて酔狂としか云いようが無い」
「――如何いう意味だ」
「人が好いにも程があるよ」
溜息を吐いて、引っ手繰るように差し出した帳面を郷嶋から奪うと表紙の一点を指で叩いて視線を求めた。
「こんなに判りやすい遺失物もないと思うんだが」
指先を注視してみると、そこに。
「気付くかよ、そんなもの」
「気付かない方が如何かしているよ」
指先には黒い六芒星。そしてその中心には『堂』の文字。
「呆れてものが云えないね」
「一体あの人は何を考えてるんだ?」
「下らないことだろうね、きっと」
云いながら、極秘と書かれたその帳面を躊躇無く開いて目を通した。
「君以上に呆れてものが云えない代物だな」
不愉快そうにまた新しい溜息を重ねた男の手元を郷嶋も覗き込む。
ざっと目を通して郷嶋は、その男の言葉の正しさを知ることとなった。
<続>
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