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真壁華夜がその日・その時感じたことや考えたことの整理或いは備忘録的に使われることもあれば萌えメモとして使われることもあるし、日常の愚痴をこぼしていることもあるかと思います。基本的に偏屈な管理人sが綴っているのでその辺を許容できる人向け。反感買いそうなものは裏日記に書くようにしています。
2007/01/17 (Wed)
03:14:10
つまりかきすて。
書き捨てにはしませんけどね。ストックです。衝動に勝てないときの必殺技。
Let'z 榎京。『鉄鼠の檻』終盤。明慧寺から仙石楼に戻ってきて。
タイトルは原作に倣って【××の×】型にしたいのですがなかなか浮かばぬものですな。
今回のはまぁ仮ですが苦しいかな。
山の奥に結界まで作って築かれた小さな箱庭。
その結界が破られたら――中にあった世界を壊したらどうなるのか――想定していなかったわけではないけれど。
自分の未熟さを思い知らせるように。
凍えた時に刻まれた執念を見せ付けるように。
古寺は瞬く間に炎の熱に抱かれ、ずっと守られてきた結界の中で朽ちて消えた。
【温もりの誘惑】
悪路を炎に追い立てられるようにして戻ってきて、探偵は関口を彼の部屋に運び込むと雪に濡れた服を着替えるために自分の部屋に引き返した。
そして、ふと、先に部屋に戻っているはずの拝み屋の気配が隣室に全くないことに気付く。
道中一言も口を利かず、仙石楼に着いてからもなお無言のまま、この上なく不機嫌な凶相で黒衣の男は誰とも目を合わせずに二階の部屋へ早々に引っ込んだはずなのだが。
誰よりも遅く眠りに就き誰よりも先に目を覚ます。まるで寝顔を見られることを避けるかのような彼が眠っているということはないだろう。しかしそれならば気配あってもよさそうなものである。
気紛れと云えば気紛れだが、少し気に掛かっていたことも否定できない。
廊下に出るとそこには冷たい空気が充満していた。
事件の苦い後味と重苦しさが冷たさと混ざり合って建物全体を支配しているようで探偵の不快感を煽る。
出て行った気配はしなかった。
だから、恐らく中にいるのだろうけれど。
「――…這入るぞ」
二度だけ控えめにノックしてドアを開けた。
暗い。
月明かりも射さない部屋を埋め尽くす暗闇を、開かれたドアから入り込む廊下の明かりが二分する。
気配はなかった。
けれど、闇よりも濃い漆黒が窓辺に佇んでいるのが見えた。
炎に包まれる寺。
その中に消えた緋色の振袖を着た少女。
暗い所為で、常人には見えないものがよく見える。
「いるなら明かりくらい点けろ。真っ暗じゃないか」
聞いているのかいないのか――それとも、聞こえていないのか。
無反応な古書肆に構わず榎木津は無遠慮に部屋の中に這入り明かりを点けた。
そこで初めて気付いたように古書肆は口を開く。
「何の用です?」
振り返りもしない。
しかし、構わず榎木津は歩み寄る。
「着替えもしないでずっとそこに立ってたのか? そんなことしてたら馬鹿だって風邪をひく」
「あんたには関係ないよ」
雪に濡れたままの憑物落しの装束が寒々しい。
近づくと、拝み屋の左手を伝う渇ききった緋色が目に付いた。
床に、一滴の血痕が染みを作っている。
「怒っているのか?」
「何をだい」
「尋いてるのは僕だ」
「質問の意味が解らなきゃ答えようがないよ」
「煙に巻いて誤魔化すつもりか?」
「誤魔化されてくれるんですか?」
期待していない。
口振りが言外にそう語っていた。
痛々しいと言うのとは違う。
自分が感じているものは、背徳さに少し似ている気がする。
「僕は謝らないぞ」
「知ってるよ」
返ってくる言葉はどれもどこか虚ろだった。
機械的に選ばれて音になっている。それだけの――魂のない言の葉。
「――…結局」
暫くの沈黙の後、独り言のように陰陽師は呟いた。
「結局、僕はまた殺めることでしか幕引きができなかった」
そうして、彼は吐露しようとしない自分の感情をその手の中に握り締める。
「まったく、何でこう僕の周りは馬鹿ばっかりなんだ」
毒づきながら探偵は手を伸ばして無理矢理止めた。
冷たい。
指先まで冷え切っている。
これでは感覚もほとんどないのではないだろうか。もしかしたら自分が現れる前にも同じようにして手のひらに傷を作っていたことにも気付いていないのかもしれない。
その手を引いて無理矢理自分の方を振り返らせる。
古書肆は俯いたまま、目を、合わせようともしない。
構わずにそのままもう片方の腕を伸ばし、頭を抱えるようにして強引に自分の肩口に埋めさせた。
「馬鹿だ馬鹿。大馬鹿だ」
探偵の言葉は容赦がない。
けれど、不思議と冷たいとは感じなかった。
「呆れるほど手がかかるじゃないか」
憮然として口にされた言葉の割に仕草は優しい。
冷えきった体に染み入る体温は卑怯なくらいだ。
喉を焼くものを堪えるように中禅寺は沈黙を選ぶ。温もりの誘惑に負けそうな自分を無理矢理抑え込む。
けれどそんな中禅寺を宥めるように榎木津は彼の頭を少し乱暴に二回叩いた。
「子供じゃあないよ」
苦笑混じりの声が少し掠れている。
「泣きたいなら泣けばいい。少しくらいなら付き合ってやらないこともない」
「遠慮するよ。そんな高い貸しは作りたくないからね」
でも――…。
言葉を濁す。
一瞬躊躇って、けれど衝動には勝てなくて。温もりの誘惑に抗えなくて。
背中に手を回す。
縋るように、抱き付く。
体温はまるで全てを許すように優しい。あまりにも甘美な幻想を見せる。
意外な反応に目を見開いた榎木津の顔は中禅寺には見えない。
「少しの、間だけでいい」
今は、縋るものが欲しい。
自分の内側を立て直す間だけ、こうして――支えていてくれる存在が。
「不器用過ぎなんだ、お前は」
それを許すように、自分の肩に埋められたままの中禅寺の頭に頬を寄せた。
「頑なにもほどがあるぞ」
「あんたほどじゃないよ」
飾らない言葉に結局暴かれる。
偽りのない体温が癒す。
温もりの誘惑に手を引かれるまま、あともう少しだけこのまま夜をやり過ごしてしまおうと目を閉じた。
★アトガキと言う名の詫状★
あ…あれ?! 仮脱稿しちゃった……。
本館の小説を書いている途中で衝動に任せて書きたいところだけ書き逃げする予定だったのがつい夢中になって最後まで書いてしまった。
『鉄鼠の檻』もなかなか美味しいですね。
ウチのは榎京と言うよりはむしろ榎木津→←京極なカンジの、プラトニックなようなメンタルなような――要するにキス止まりでさえもないようなBL風味の関係な二人が基本です。
でも一線を超える日はあると思いますよ。
私的に『塗仏の宴 宴の始末』のなんですが。
それはまたそのうち。
一応仮脱稿なので草稿扱いです。サイト下ろしする際には、結構加筆修正されるんじゃないかと思われます。
あー…それにしても楽しかったvv
書き捨てにはしませんけどね。ストックです。衝動に勝てないときの必殺技。
Let'z 榎京。『鉄鼠の檻』終盤。明慧寺から仙石楼に戻ってきて。
タイトルは原作に倣って【××の×】型にしたいのですがなかなか浮かばぬものですな。
今回のはまぁ仮ですが苦しいかな。
山の奥に結界まで作って築かれた小さな箱庭。
その結界が破られたら――中にあった世界を壊したらどうなるのか――想定していなかったわけではないけれど。
自分の未熟さを思い知らせるように。
凍えた時に刻まれた執念を見せ付けるように。
古寺は瞬く間に炎の熱に抱かれ、ずっと守られてきた結界の中で朽ちて消えた。
【温もりの誘惑】
悪路を炎に追い立てられるようにして戻ってきて、探偵は関口を彼の部屋に運び込むと雪に濡れた服を着替えるために自分の部屋に引き返した。
そして、ふと、先に部屋に戻っているはずの拝み屋の気配が隣室に全くないことに気付く。
道中一言も口を利かず、仙石楼に着いてからもなお無言のまま、この上なく不機嫌な凶相で黒衣の男は誰とも目を合わせずに二階の部屋へ早々に引っ込んだはずなのだが。
誰よりも遅く眠りに就き誰よりも先に目を覚ます。まるで寝顔を見られることを避けるかのような彼が眠っているということはないだろう。しかしそれならば気配あってもよさそうなものである。
気紛れと云えば気紛れだが、少し気に掛かっていたことも否定できない。
廊下に出るとそこには冷たい空気が充満していた。
事件の苦い後味と重苦しさが冷たさと混ざり合って建物全体を支配しているようで探偵の不快感を煽る。
出て行った気配はしなかった。
だから、恐らく中にいるのだろうけれど。
「――…這入るぞ」
二度だけ控えめにノックしてドアを開けた。
暗い。
月明かりも射さない部屋を埋め尽くす暗闇を、開かれたドアから入り込む廊下の明かりが二分する。
気配はなかった。
けれど、闇よりも濃い漆黒が窓辺に佇んでいるのが見えた。
炎に包まれる寺。
その中に消えた緋色の振袖を着た少女。
暗い所為で、常人には見えないものがよく見える。
「いるなら明かりくらい点けろ。真っ暗じゃないか」
聞いているのかいないのか――それとも、聞こえていないのか。
無反応な古書肆に構わず榎木津は無遠慮に部屋の中に這入り明かりを点けた。
そこで初めて気付いたように古書肆は口を開く。
「何の用です?」
振り返りもしない。
しかし、構わず榎木津は歩み寄る。
「着替えもしないでずっとそこに立ってたのか? そんなことしてたら馬鹿だって風邪をひく」
「あんたには関係ないよ」
雪に濡れたままの憑物落しの装束が寒々しい。
近づくと、拝み屋の左手を伝う渇ききった緋色が目に付いた。
床に、一滴の血痕が染みを作っている。
「怒っているのか?」
「何をだい」
「尋いてるのは僕だ」
「質問の意味が解らなきゃ答えようがないよ」
「煙に巻いて誤魔化すつもりか?」
「誤魔化されてくれるんですか?」
期待していない。
口振りが言外にそう語っていた。
痛々しいと言うのとは違う。
自分が感じているものは、背徳さに少し似ている気がする。
「僕は謝らないぞ」
「知ってるよ」
返ってくる言葉はどれもどこか虚ろだった。
機械的に選ばれて音になっている。それだけの――魂のない言の葉。
「――…結局」
暫くの沈黙の後、独り言のように陰陽師は呟いた。
「結局、僕はまた殺めることでしか幕引きができなかった」
そうして、彼は吐露しようとしない自分の感情をその手の中に握り締める。
「まったく、何でこう僕の周りは馬鹿ばっかりなんだ」
毒づきながら探偵は手を伸ばして無理矢理止めた。
冷たい。
指先まで冷え切っている。
これでは感覚もほとんどないのではないだろうか。もしかしたら自分が現れる前にも同じようにして手のひらに傷を作っていたことにも気付いていないのかもしれない。
その手を引いて無理矢理自分の方を振り返らせる。
古書肆は俯いたまま、目を、合わせようともしない。
構わずにそのままもう片方の腕を伸ばし、頭を抱えるようにして強引に自分の肩口に埋めさせた。
「馬鹿だ馬鹿。大馬鹿だ」
探偵の言葉は容赦がない。
けれど、不思議と冷たいとは感じなかった。
「呆れるほど手がかかるじゃないか」
憮然として口にされた言葉の割に仕草は優しい。
冷えきった体に染み入る体温は卑怯なくらいだ。
喉を焼くものを堪えるように中禅寺は沈黙を選ぶ。温もりの誘惑に負けそうな自分を無理矢理抑え込む。
けれどそんな中禅寺を宥めるように榎木津は彼の頭を少し乱暴に二回叩いた。
「子供じゃあないよ」
苦笑混じりの声が少し掠れている。
「泣きたいなら泣けばいい。少しくらいなら付き合ってやらないこともない」
「遠慮するよ。そんな高い貸しは作りたくないからね」
でも――…。
言葉を濁す。
一瞬躊躇って、けれど衝動には勝てなくて。温もりの誘惑に抗えなくて。
背中に手を回す。
縋るように、抱き付く。
体温はまるで全てを許すように優しい。あまりにも甘美な幻想を見せる。
意外な反応に目を見開いた榎木津の顔は中禅寺には見えない。
「少しの、間だけでいい」
今は、縋るものが欲しい。
自分の内側を立て直す間だけ、こうして――支えていてくれる存在が。
「不器用過ぎなんだ、お前は」
それを許すように、自分の肩に埋められたままの中禅寺の頭に頬を寄せた。
「頑なにもほどがあるぞ」
「あんたほどじゃないよ」
飾らない言葉に結局暴かれる。
偽りのない体温が癒す。
温もりの誘惑に手を引かれるまま、あともう少しだけこのまま夜をやり過ごしてしまおうと目を閉じた。
――THE END――
★アトガキと言う名の詫状★
あ…あれ?! 仮脱稿しちゃった……。
本館の小説を書いている途中で衝動に任せて書きたいところだけ書き逃げする予定だったのがつい夢中になって最後まで書いてしまった。
『鉄鼠の檻』もなかなか美味しいですね。
ウチのは榎京と言うよりはむしろ榎木津→←京極なカンジの、プラトニックなようなメンタルなような――要するにキス止まりでさえもないようなBL風味の関係な二人が基本です。
でも一線を超える日はあると思いますよ。
私的に『塗仏の宴 宴の始末』のなんですが。
それはまたそのうち。
一応仮脱稿なので草稿扱いです。サイト下ろしする際には、結構加筆修正されるんじゃないかと思われます。
あー…それにしても楽しかったvv
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