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真壁華夜がその日・その時感じたことや考えたことの整理或いは備忘録的に使われることもあれば萌えメモとして使われることもあるし、日常の愚痴をこぼしていることもあるかと思います。基本的に偏屈な管理人sが綴っているのでその辺を許容できる人向け。反感買いそうなものは裏日記に書くようにしています。
2009/05/21 (Thu)
19:35:52
[01]
突然の召集が掛かったのは、九州エリアで発生した広域事件の調査に死神が向かってから三日目のことだった。
聞き入れた言葉をそのまま処理しようとして数秒後、その意味を漸く理解して巽は聞き返す。
「すみません、もう一度よろしいですか?」
耳を疑うような報告だった。
「都筑の消息が不明になっている」
近衛は苦い顔をして溜息を吐く。
濁された言葉は亘理が継いだ。
「今回の事件、九州全土とは言わへんけど…鹿児島に大分、それから長崎と…ほぼ正三角形の位置で事件が起こっとるのは知っとるな?」
「えぇ。だからこそ二人一組の行動が義務付けられているにも関わらず、それにより発生する移動のロスが大きいことを考慮して、都筑さんと黒崎君、補助として亘理さんを担当として派遣し、それぞれ別に初期捜査をすることが認められたんじゃありませんか」
「その通りや。――そんでな、坊が鹿児島、俺が大分、都筑が長崎に向かったんや。それも話したな?」
「聞いてます」
勿体ぶるように言葉を濁し、亘理は巽の反応を見ながら続ける。
「同一犯と思われとるわけやから、現地で集めた情報やらに気になる点があったら随時電話で報告し合うてな。三日目――つまり今日や。一度こっちに戻って情報の整理やらをしようて話になっとった」
「――それで?」
「昨日の…夕方くらいからか?」
視線を投げた先の密が「はい」と小さく頷いて答える。
「都筑と連絡が取れんようになってしもてな。携帯の電源も切っとるのか…何回かけても繋がらん状態や。それでも調査中で携帯があかん場合も考えられるさかい、もっと遅なってからでもええし、それもあかんのやったら明日――つまり今日やな。ここで落ち合えればそれでええと思てそんなに気にしてへんかったんやけど……」
「来ないんです、ここに。約束の時間はとっくに過ぎているのに」
「来ないだけやない。相変わらず連絡が取れへんままなんや」
沈黙。
空気が、ぐっと重くなったような、錯覚。
「忘れてるだけじゃないですか? あの人のことですし」
過去、何度甘い物の誘惑に後先を忘れて捜査会議の遅刻・欠席を繰り返したことか。
そう言いたげに巽は軽くあしらって無関心そうに眼鏡を直した。
「まぁ…その可能性がないとは言わへんけど…考えにくいのんと違うか? 一日単位で豪快に忘れるほど都筑も能天気やないで? それに電話が使えん状況やったとしても、あいつは式や式神が使えるんや。普通なら連絡用に使い魔を飛ばすくらいするやろ? それもないんやで?」
「それで――『都筑さんが消息不明になった』、ですか?」
考え難いとばかりに巽は進まない顔をする。
「いささか安直な気もしますが…まぁ、いいでしょう。仮に都筑さんが何者かに誘拐されたとか、調査の途中で事件の中心人物と接触するなどしてこの事件に巻き込まれたとか…他にも考えられることはあるのでしょうがとりあえず消息不明ということにしまょう。実際それに近い現状があるようですし」
これまでの情報をまとめ、巽は少しうんざりした顔で言った。
「それで? 現時点で何か支障があるんですか?」
「は?」
「え?」
亘理と密がほぼ同時に反応した。
「長崎の状態が判らないのは確かに困りますが…もともと同一犯であることがほぼ確定している上での捜査でしょう? 黒崎君と亘理さんの方の初期調査が一通り済んでいるなら、二人で長崎に向かって調査の継続をし、必要があればまた各地へ飛ぶといった形になっても支障はないのではありませんか?」
「それは――まぁ、そうやけど」
「あの人は昼行灯ですけど能力はトップクラスです。最高位の式神、十二神将を従えているんですから滅多なことじゃ死に至るような事態にはなりませんよ。課長も何を心配なさっているんですか? 事件の調査には支障がないんですから、ひとまず黒崎君と亘理さんに長崎に飛んでもらって、長崎の調査と並行して都筑さんの行方を追ってもらえば問題ありません。違いますか?」
「……そう、だな」
近衛が重い口を開き、巽の案に同意を示す。
「亘理、そして黒崎君。鹿児島と大分の状況はどうなんだ?」
「どーもこーもない。報告もらったことの裏付けが出来た程度や。それ以上の収穫は大分にはない」
「俺の方も亘理さんと同じです。ただ――現場で、覚えのある気配を極微弱にですが感じた気がしたんですが――」
「お、流石やなぁ坊。それでどうだったんや?」
「すみません。それがどうしても思い出せなくて。他の現場を見てみれば思い出せたりもするかなって、思ったんですが……」
「良かろう」
一つの、決断。
「黒崎君は亘理とともに大分に向かえ。本来は二人一組での行動が原則だからな」
「それは構へんけど…そしたら、長崎はどうするんや?」
「もう一人、こちらから人を回そう。もし、都筑が事件の核心に近付いたため消息不明な状態に陥っているなら長崎が一番危険だ。都筑が見つかり次第、原則通り二人一組で動いた方が無難だろう。――巽」
「はい」
「お前が行け」
思わぬ飛び火に聞き返す。
「私が…ですか?」
「そうだ。本当ならば都筑のパートナーである黒崎君を戻すのが筋なのだろうが…すまんな。これ以上、後手に回るようなことにはしたくない。都筑が事件に巻き込まれたことを想定した場合、黒崎君だけではまだ苦しいだろう。これは能力の相性という意味だが」
「……はい」
悔しさを、それでも納得して密が答える。巽もその指示を呑んだ。
「今回の事件、嫌な予感がする」
杞憂に終われば良いのだがな。
小さく、独り言のようにこぼされた言葉は多分、巽の耳にしか届いていなかっだろう。
「……解りました」
「では解散だ。ただちに現場へ飛べ」
その言葉を以って会議は終了し、亘理と密は先に現地に移動した。巽は秘書としての仕事を片付けて、都筑の後を引き継ぐという形でまずは犯行現場へと向かう。
「ここですね」
立ち入り禁止のロープが張り巡らされたままになっている場所を、影でスキャンする。
異常は特にない。捜査員が見落とした遺留品の類も発見できなかった。
「一日目は連絡が取れていたわけですから、ここで何かがあったということは考えにくい」
けれど、確かに何かが起こったのだ。
仮に都筑がこの事件に巻き込まれるなどして身柄を拘束された状態にある場合、密や亘理の能力では分が悪い。いや、確かに――近衛の言葉通り相性が悪い。
「とにかく、情報集めるのが先ですね」
現場を後にして街中の方へ向かった。一定範囲で影を展開し、スキャンしながら歩く。体力は消耗するが僅かな手がかりも見逃すわけにはいかない。
いくつもの坂道を越えながらの移動。歴史のある街でもあるのでその片鱗をあちこちで見かける。
裏通りだろうか。静やかな空気の一角。右手に大きな影を感じて顔を上げた。
階段の上にあったのは、教会。
生ける者のための神がいるところ。
死を司る自分達とは対極の存在。
「――…え?」
影が、感知したものには覚えがある。
目を閉じて、意識を集中させた。
「あそこですか」
見上げた建物。
対極の神が住まう場所。
「まったく、とんだ皮肉ですね」
階段の方に足を向ける。
昼間の太陽を雲が飲み込んで、行く手を影で包み出した。
to be continued......
●暫定更新その2。
新館の吸殻部屋に投下される予定の、【それでもと重ねたものは、多分】の続編。
邑→都で巽都なかんじのシロモノ。
無駄に連載。
全部で何話になるかは真壁にも判りません。
畳んでありますのでよろしければどうぞ↓
新館の吸殻部屋に投下される予定の、【それでもと重ねたものは、多分】の続編。
邑→都で巽都なかんじのシロモノ。
無駄に連載。
全部で何話になるかは真壁にも判りません。
畳んでありますのでよろしければどうぞ↓
[01]
突然の召集が掛かったのは、九州エリアで発生した広域事件の調査に死神が向かってから三日目のことだった。
聞き入れた言葉をそのまま処理しようとして数秒後、その意味を漸く理解して巽は聞き返す。
「すみません、もう一度よろしいですか?」
耳を疑うような報告だった。
「都筑の消息が不明になっている」
近衛は苦い顔をして溜息を吐く。
濁された言葉は亘理が継いだ。
「今回の事件、九州全土とは言わへんけど…鹿児島に大分、それから長崎と…ほぼ正三角形の位置で事件が起こっとるのは知っとるな?」
「えぇ。だからこそ二人一組の行動が義務付けられているにも関わらず、それにより発生する移動のロスが大きいことを考慮して、都筑さんと黒崎君、補助として亘理さんを担当として派遣し、それぞれ別に初期捜査をすることが認められたんじゃありませんか」
「その通りや。――そんでな、坊が鹿児島、俺が大分、都筑が長崎に向かったんや。それも話したな?」
「聞いてます」
勿体ぶるように言葉を濁し、亘理は巽の反応を見ながら続ける。
「同一犯と思われとるわけやから、現地で集めた情報やらに気になる点があったら随時電話で報告し合うてな。三日目――つまり今日や。一度こっちに戻って情報の整理やらをしようて話になっとった」
「――それで?」
「昨日の…夕方くらいからか?」
視線を投げた先の密が「はい」と小さく頷いて答える。
「都筑と連絡が取れんようになってしもてな。携帯の電源も切っとるのか…何回かけても繋がらん状態や。それでも調査中で携帯があかん場合も考えられるさかい、もっと遅なってからでもええし、それもあかんのやったら明日――つまり今日やな。ここで落ち合えればそれでええと思てそんなに気にしてへんかったんやけど……」
「来ないんです、ここに。約束の時間はとっくに過ぎているのに」
「来ないだけやない。相変わらず連絡が取れへんままなんや」
沈黙。
空気が、ぐっと重くなったような、錯覚。
「忘れてるだけじゃないですか? あの人のことですし」
過去、何度甘い物の誘惑に後先を忘れて捜査会議の遅刻・欠席を繰り返したことか。
そう言いたげに巽は軽くあしらって無関心そうに眼鏡を直した。
「まぁ…その可能性がないとは言わへんけど…考えにくいのんと違うか? 一日単位で豪快に忘れるほど都筑も能天気やないで? それに電話が使えん状況やったとしても、あいつは式や式神が使えるんや。普通なら連絡用に使い魔を飛ばすくらいするやろ? それもないんやで?」
「それで――『都筑さんが消息不明になった』、ですか?」
考え難いとばかりに巽は進まない顔をする。
「いささか安直な気もしますが…まぁ、いいでしょう。仮に都筑さんが何者かに誘拐されたとか、調査の途中で事件の中心人物と接触するなどしてこの事件に巻き込まれたとか…他にも考えられることはあるのでしょうがとりあえず消息不明ということにしまょう。実際それに近い現状があるようですし」
これまでの情報をまとめ、巽は少しうんざりした顔で言った。
「それで? 現時点で何か支障があるんですか?」
「は?」
「え?」
亘理と密がほぼ同時に反応した。
「長崎の状態が判らないのは確かに困りますが…もともと同一犯であることがほぼ確定している上での捜査でしょう? 黒崎君と亘理さんの方の初期調査が一通り済んでいるなら、二人で長崎に向かって調査の継続をし、必要があればまた各地へ飛ぶといった形になっても支障はないのではありませんか?」
「それは――まぁ、そうやけど」
「あの人は昼行灯ですけど能力はトップクラスです。最高位の式神、十二神将を従えているんですから滅多なことじゃ死に至るような事態にはなりませんよ。課長も何を心配なさっているんですか? 事件の調査には支障がないんですから、ひとまず黒崎君と亘理さんに長崎に飛んでもらって、長崎の調査と並行して都筑さんの行方を追ってもらえば問題ありません。違いますか?」
「……そう、だな」
近衛が重い口を開き、巽の案に同意を示す。
「亘理、そして黒崎君。鹿児島と大分の状況はどうなんだ?」
「どーもこーもない。報告もらったことの裏付けが出来た程度や。それ以上の収穫は大分にはない」
「俺の方も亘理さんと同じです。ただ――現場で、覚えのある気配を極微弱にですが感じた気がしたんですが――」
「お、流石やなぁ坊。それでどうだったんや?」
「すみません。それがどうしても思い出せなくて。他の現場を見てみれば思い出せたりもするかなって、思ったんですが……」
「良かろう」
一つの、決断。
「黒崎君は亘理とともに大分に向かえ。本来は二人一組での行動が原則だからな」
「それは構へんけど…そしたら、長崎はどうするんや?」
「もう一人、こちらから人を回そう。もし、都筑が事件の核心に近付いたため消息不明な状態に陥っているなら長崎が一番危険だ。都筑が見つかり次第、原則通り二人一組で動いた方が無難だろう。――巽」
「はい」
「お前が行け」
思わぬ飛び火に聞き返す。
「私が…ですか?」
「そうだ。本当ならば都筑のパートナーである黒崎君を戻すのが筋なのだろうが…すまんな。これ以上、後手に回るようなことにはしたくない。都筑が事件に巻き込まれたことを想定した場合、黒崎君だけではまだ苦しいだろう。これは能力の相性という意味だが」
「……はい」
悔しさを、それでも納得して密が答える。巽もその指示を呑んだ。
「今回の事件、嫌な予感がする」
杞憂に終われば良いのだがな。
小さく、独り言のようにこぼされた言葉は多分、巽の耳にしか届いていなかっだろう。
「……解りました」
「では解散だ。ただちに現場へ飛べ」
その言葉を以って会議は終了し、亘理と密は先に現地に移動した。巽は秘書としての仕事を片付けて、都筑の後を引き継ぐという形でまずは犯行現場へと向かう。
「ここですね」
立ち入り禁止のロープが張り巡らされたままになっている場所を、影でスキャンする。
異常は特にない。捜査員が見落とした遺留品の類も発見できなかった。
「一日目は連絡が取れていたわけですから、ここで何かがあったということは考えにくい」
けれど、確かに何かが起こったのだ。
仮に都筑がこの事件に巻き込まれるなどして身柄を拘束された状態にある場合、密や亘理の能力では分が悪い。いや、確かに――近衛の言葉通り相性が悪い。
「とにかく、情報集めるのが先ですね」
現場を後にして街中の方へ向かった。一定範囲で影を展開し、スキャンしながら歩く。体力は消耗するが僅かな手がかりも見逃すわけにはいかない。
いくつもの坂道を越えながらの移動。歴史のある街でもあるのでその片鱗をあちこちで見かける。
裏通りだろうか。静やかな空気の一角。右手に大きな影を感じて顔を上げた。
階段の上にあったのは、教会。
生ける者のための神がいるところ。
死を司る自分達とは対極の存在。
「――…え?」
影が、感知したものには覚えがある。
目を閉じて、意識を集中させた。
「あそこですか」
見上げた建物。
対極の神が住まう場所。
「まったく、とんだ皮肉ですね」
階段の方に足を向ける。
昼間の太陽を雲が飲み込んで、行く手を影で包み出した。
to be continued......
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