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真壁華夜がその日・その時感じたことや考えたことの整理或いは備忘録的に使われることもあれば萌えメモとして使われることもあるし、日常の愚痴をこぼしていることもあるかと思います。基本的に偏屈な管理人sが綴っているのでその辺を許容できる人向け。反感買いそうなものは裏日記に書くようにしています。
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2009/05/22 (Fri) 23:47:42
●今晩和、真壁です。
 昨日実は4話目まで脱稿していたのですが出し惜しみましたというか時間がありませんでした。
 長いね…多分全5話じゃないかな。
 でもその後更に続きというオマケがあるわけですよ。

 お付き合い下さる方にはただ感謝。



--------------------
 [03]
--------------------

 踏み込んだのは異教と言うより対極に位置する神の住処。
 観音開きの扉を開くと、夕暮れの日差しはステンドグラスを透過して更に色を変え、中は一瞬幻想的に目に映る。
 長椅子の間の通路を歩くと高い天井に靴音がやけに響いて消えた。
「都筑さん? ここに居るんですか?」
 視線を投げると黒いコートの後ろ姿。
 歩み寄って、もう一度声を掛ける。
「都筑さん?」
 回りこんで顔を覗き込む。
「まったく、連絡も寄越さないで一体何処で何を――」
 正面に立って漸く気付いた。
 眠っているというよりは意識を失っているように見える。
「これは……」
 目尻に残る涙の痕。
「泣いて、いたんですか? 都筑さん」
 どうして。
 消息がつかめなかったこの二日間で一体何があったのだろう。
 しかし考えたところで答えの見当も付かない。
 ひとまず、課長への連絡が先だ。
 携帯電話で召喚課へ。
 近衛に繋いでもらい報告を入れる。
『巽か。――どうした?』
「長崎で都筑さんを保護しました。一度そちらへ戻ります」
『そうか』
「気を失っている状態なので念のため保健管理室へ運んだ方がよろしいかと」
『解った、そうしてくれ。一度亘理と黒崎君も呼び戻そう。亘理の他に診られる人間も今おらんからな』
「お願いします」
 電話を切り、都筑を横抱きに抱えて閻魔庁へと帰還する。
 保健管理室に直行し、空いているベッドに寝かせ。
「え?」
 視界の隅に映った襟元。
 まだ新しい鬱血の痕。
 さりげなく、それでも確かに主張するような、刻印。
「――まさか」
 確かに嫌な予感はしていた。
 密の言葉に引っ掛かりを感じていたのも事実だ。
「まだ推測の域を出ないことを考えても仕方がありませんね」
 吐き出した溜息とともにそんな思考に鍵を掛ける。
 改めて見た都筑の顔は少し憔悴しているようだった。
 額に触れ、体温を確かめる。高くも低くもない――多分、平熱の域だ。
 それでも。
 涙の痕くらいは拭っておこうと棚から新しいタオルを拝借して水を含ませた。少しきつめに絞ってベッドに引き返し、顔を丁寧に拭ってやる。
 僅かに、瞼が痙攣した。
「都筑さん?」
 声を掛けるが起きる気配はない。
 代わりのようにまた新しい涙が零れ落ちる。
 宥めるように目尻に口付けて、他の者の目に触れないよう、タオルで瞼を覆い隠した。
 一時間ほどして戻ってきた亘理が体温や脈拍、血圧など確認したが特に異常はないとのことで、近衛の指示の下密を伴って現場へと戻っていった。
「巽、お前は都筑が目を覚ますまで待機だ」
「解りました」
 保健管理室から人が退いていく。
 都筑と、二人だけ残された。
 静かに――時が、流れていく。
 持て余す時間は胡乱な方向へと思考を導くばかりだった。
「長崎で…貴方は誰に会ったんですか?」
 そして何があったのか。
 脳裏を、不快な推論が過ぎる。時間に比例して、確信めいたものとなって圧し掛かる。
 夜も更け、庁舎からは人気が消えていく。
 都筑は、まだ、目を覚まさない。
 苛立ちに似た焦り。
 否定を待っている予測が鬱陶しい。
「ん……」
 小さく、吐息交じりの声が聞こえた。
「都筑さん?」
 顔を上げる。
 都筑の目を覆っていたタオルは枕元に落ちていた。
 漸く目を開けた都筑は焦点の合わない目で視線をめぐらせている。
「都筑さん」
 もう一度呼ぶと、声に反応したように視線が向けられた。
「――…たつ、み……?」
 急速な覚醒。
「待ちくたびれましたよ。まったく、連絡も寄越さないで――何があったんです?」
 過剰な反応。
 顔色が、瞬時に青褪めていく。
「……都筑さん?」
 巽の声を、遠くに聞いていた。
 覚醒してきた感覚が、都筑に、あの裏切りの時間を思い起こさせる。
「ごめん、俺…ヘマをして、それで――」
 言い訳を考えてみるけれど、混乱した思考は上手く言葉を紡げない。
 それでも、巽の視線を避けて、込み上げてくる苦しさに気付かない振りをして必死に考える。
「ごめん、俺は大丈夫だから」
 ほんとに、ごめん。
 顔を合わせないようにしてベッドから降りる。
 立ち眩みを覚えたけれど強引に捩じ伏せて背を向けた。
「俺、とりあえず課長に報告に行けばいいのかな? あぁ、でも…この時間じゃもういないか。明日でいいのか?」
 ドアに向かって歩き、保健管理室を後にしようとノブに手を掛ける。
 それを、追ってくる、足音。
 腕を掴まれて、強引に体を反転させられて、ドアに――押し付けられるようにして巽に捕えられた。
「――巽、放せって」
「どうして、さっきから私を見ようとしないんです?」
「別に、そんなこと」
「ないとは言わせませんよ? 今だって、私と目を合わせるのを避けているじゃありませんか」
「それは」
「一体、何があったんです?」
 言えない。
「言えない」とさえも、言えない。
 だから、都筑は沈黙を選んだ。
 巽の、真っ直ぐな視線が痛い。
「……ごめん」
 小さく、それだけを紡ぐのが精一杯だった。
「え?」
 掴まれていた手の力が一瞬緩む。
 その隙を突くように手を振り払って、都筑は術で姿を消した。
「都筑さん」
 呼んだ時には既にそこに姿はなく。
 光の残滓が僅かに残るばかり。
 頑なな抵抗。
 崩せない閉口。
 まるであの予感を裏付けるような言葉。
 やっと都筑が見つかったというのに何一つ解決した気がしない。
 深い溜息が静寂に溶ける。
 擦り抜けた体温が、ひどく、心許無かった。


 to be continued......  
  

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