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真壁華夜がその日・その時感じたことや考えたことの整理或いは備忘録的に使われることもあれば萌えメモとして使われることもあるし、日常の愚痴をこぼしていることもあるかと思います。基本的に偏屈な管理人sが綴っているのでその辺を許容できる人向け。反感買いそうなものは裏日記に書くようにしています。
2009/05/24 (Sun)
16:22:42
●参った…次で終わるのかも微妙だ( ̄▽ ̄;)
闇末のキャラは、邑輝センセと巽さんは真壁の本体の属性が近いからか――でもあんま関係ないのかなそれは。アニメとしてもう出来上がったものがあるから、その音声が喋った科白書き留めてるだけだもんなぁ。
でもそう喋ってもらうには自分の中で把握されている口調が元にデータになってんだろうから、やっぱそういう部分が書きやすいのだと思われます。はい。
――で。
一番困るのが…多分これまで書いたキャラの中で唯一標準語を外れている亘理さんですよ。関西弁がとてもアヤシイ。
でもこれ…本人(人じゃないけど)が「生まれは京都の大阪育ちだからでたらめな関西弁が身に付いてしまった」って暴露してるからもうさ……。
関西弁がデタラメなのはもう真壁が書いたとか関係なく
デフォ
ってことでお願いします。
デタラメな関西弁がデフォルトなんだから、奇妙しいことなど何もない。
不思議なことなどn(ry
そんなかんじで。
後1~2話続きます。
ごめんなさいね…旧館と新館のメイン(京極)待ちの方。
あと砂駕さんの薬屋関係の方。
これ終わったらスイッチ切れると思うので、もう少しだけ…お待ち下さい。
●あとコメントやらのレスが滞っててすみません(汗)
ちょっと…今書く方が追いつかなくって……。
し、しばしお待ちをorz
拍手もありがとうございます!
多分これ闇末連載に関係ない新館か旧館の方だと思うのですが、もし闇末にリアクションいただけるようでしたらこう…それとなく教えていただけると嬉しいです。
●そして更に余談ですが。
邑輝センセと巽さんは素で鬼畜な眼鏡だね…ってかそんなゲームあったねぇぇな話をしていてニコを回ったら。
同じこと考えた ネ申 がいたようで。
すげぇ秀逸なMADを発見してしまった。
あれが実在するなら迷わず買う!
闇末のキャラは、邑輝センセと巽さんは真壁の本体の属性が近いからか――でもあんま関係ないのかなそれは。アニメとしてもう出来上がったものがあるから、その音声が喋った科白書き留めてるだけだもんなぁ。
でもそう喋ってもらうには自分の中で把握されている口調が元にデータになってんだろうから、やっぱそういう部分が書きやすいのだと思われます。はい。
――で。
一番困るのが…多分これまで書いたキャラの中で唯一標準語を外れている亘理さんですよ。関西弁がとてもアヤシイ。
でもこれ…本人(人じゃないけど)が「生まれは京都の大阪育ちだからでたらめな関西弁が身に付いてしまった」って暴露してるからもうさ……。
関西弁がデタラメなのはもう真壁が書いたとか関係なく
デフォ
ってことでお願いします。
デタラメな関西弁がデフォルトなんだから、奇妙しいことなど何もない。
不思議なことなどn(ry
そんなかんじで。
後1~2話続きます。
ごめんなさいね…旧館と新館のメイン(京極)待ちの方。
あと砂駕さんの薬屋関係の方。
これ終わったらスイッチ切れると思うので、もう少しだけ…お待ち下さい。
●あとコメントやらのレスが滞っててすみません(汗)
ちょっと…今書く方が追いつかなくって……。
し、しばしお待ちをorz
拍手もありがとうございます!
多分これ闇末連載に関係ない新館か旧館の方だと思うのですが、もし闇末にリアクションいただけるようでしたらこう…それとなく教えていただけると嬉しいです。
●そして更に余談ですが。
邑輝センセと巽さんは素で鬼畜な眼鏡だね…ってかそんなゲームあったねぇぇな話をしていてニコを回ったら。
同じこと考えた ネ申 がいたようで。
すげぇ秀逸なMADを発見してしまった。
あれが実在するなら迷わず買う!
-----------------
[06]
-----------------
耳に柔らかな余韻を残す、優しい言葉が遠くで聞こえた。
また、涙が溢れてくる。
許されたいと願ってしまう、自分の弱さから必死に目を背ける。
「巽……」
何があったのかなんて、既に知られてしまっているのだろう。
それでも、彼はそのままの自分を受け止めようとしてくれている。
「許さないでよ」
こんなに醜く汚れている自分を。
迷惑を掛けることしか出来ない自分を。
見限って、振り向きもしないで、嫌ってくれたらいいのに。
「――…っ」
脳裏に、邑輝の言葉が浮かんで消える。
否定できない事実。
原罪を背負い、それ故に闇を抱え、そのことを誰に理解されることもなく隠し通し、傷を増やしながら生き続ける存在。
確かに、鏡写しのように似ていて。
だからこそ――解りたくなどないのに解ってしまった。
認めたくなどなかったのに。
指先が、床に転がったままのナイフを掠めた。
衝動的に握って、躊躇う。
脳裏に過ぎった巽の言葉。
裏切れない、願い。
自分は、死に逃げることも、出来ない。
これが贖いなのだろうかと考える。
また同じように傷付けて、迷惑を掛けて、困らせて、八つ当たりして。
相応しくなど、ないと。
彼の想いに自分は値しないと。
本心で、そう思うのに。
それでも――あの温もりへの恋しさが、枯れない、なんて。
勝手だ。
苦しいと思うのも、涙が零れるのも。
何もかも全てが勝手過ぎる。
巽は邑輝と決着をつけに行ったのだろう。
邑輝は、彼に全てを告げてしまうのだろうか。
そうしたら、巽は今度こそ自分を見限るに違いない。
「それでいいんだ…それで」
全部、壊れて終わってしまえばいい。
自嘲して願って。
一抹の不安に締め付けられる。
きっと、邑輝は巽自身を否定するように――呪詛めいた言葉を紡ぐのだろう。
自分から引き離すために。
ならばそれは――…
間接的に巽を傷付けるのと同じだ。
会うのが恐い。
躊躇が体を縛る。
自惚れかも知れない。
それでも、これ以上巽に迷惑を掛けたくないと願う。
パートナーの解消を宣告されたあの日、上手に吐けなかった嘘。
あの日の後悔に似た、躊躇が迷いを断ち切った。
巽は悪くなどないのに。
自分の所為で――彼が罪悪感を感じることなど何一つないのに。
だから、自分は行かなければ。
涙を拭く。
立ち上がって、深呼吸を、一つ。
長崎に向かう。恐らく、巽は邑輝のところにいる。
追跡用の遣い魔を放ってその後を追いかけた。
忌まわしいあの場所へと導かれ、躊躇を捩じ伏せ都筑は邸内へ侵入する。
霊体のまま二階へと急いだ。近付くだけで、緊張した空気が伝わってくる。
ここには使用人を置いていないのか、それとも邑輝の別宅に類する建物ではないのか――この騒ぎに誰かが気付きこの状況に慌てた様子もない。
壊れた壁から廊下に声が洩れていた。
邑輝は、やはり、言葉で人の心を蝕もうとしている。
「どうして、そんなに都筑さんを庇うのです? 罪悪感ですか?」
「そんなことを聞いてどうなさるんです?」
「失礼、ただの好奇心ですよ。もし罪悪感なら滑稽だと思いましてね。だってそうでしょう? 貴方がちゃんと気付いてあげないからいけないんですよ」
不敵に笑って邑輝は続ける。
「巽さん、貴方のその想いがどれほど深いおつもりなのかは判りませんが……」
「貴方には劣るとでも言いたそうですね」
「ほう、流石に察しがいいですね」
足が止まる。
しかし、巽の言葉は邑輝の言葉を切り捨てた。
「貴方のお好みに合わせて申し上げれば――何処まで行っても他人は他人です。完全に分かり合うことなんてそれこそ幻想に過ぎませんよ。どれだけ同じものを抱えていてもそれは同じこと」
「なるほど」
「確かに、貴方は都筑さんと共通する何かを抱えていらっしゃるのかもしれませんが」
空気が凍りつく、気配。
「それこそ滑稽ですよ、ドクター。私にしてみればね。生まれて半世紀にも満たない若造の戯言にしか聞こえません」
何故だろう。
「同じものを抱えているという事実に溺れるが故に、いたわることを忘れた貴方は同じものを抱えているという利点を御自身で台無しにしておいでだ」
何故なのだろう。
庇われているわけではないのに、巽が、守ろうとしてくれているのを感じた。
自惚れでも良い。
今は――ただ、巽の力になりたい。
札をとり、呪を唱えて術を放った。
衝撃。
場の均衡が一瞬にして崩れ、二人の視線は闖入者である都筑に向く。
「都筑さん」
巽は、素直に驚きをぶつけてきた。
「おやおや。お早いお目覚めですね」
邑輝は相変わらず冷たい毒を向けてくる。
「そこの、秘書殿のおかげだとしたら少しばかり妬けますが」
冗談とも本気ともつかない口振り。
「そんなに――その秘書殿が大切ですか? ならば貴方を解放して差し上げるために、先に彼を倒す必要がある」
負けるな。
自分に言い聞かせる。
「はっきり言っておくぜ、邑輝」
解ってしまった傷もあった。
伝わってきた痛みもあった。
確かに、邑輝の言葉はある意味では正しいのかもしれない。
けれど。
「俺は、お前のものになんかならない」
もう誰のものにもならない。誰のものにもなれない。なる資格がない。
「それは残念。でも――今更、戻る場所があるんですか?」
言葉の楔。
呑まれてはいけない。
「それでも…だよ」
「ならば余計、放っておくのは忍びないですね」
思考が麻痺しそうになるのを堪え。
「是が非でもお招きしたいところですが――」
視線を、都筑越しに巽に向けて。
「秘書殿が恐い顔で睨んでいらっしゃることですし、都筑さんに免じて今日は私が引きましょう」
さようなら都筑さん。
光を纏って姿を消す。
巽と二人だけ、この場所に残されてしまった。
まだ、気まずい。
振り返ることができない。
「――…ごめん」
謝罪の言葉を口にするのが精一杯で。
やっとでそれだけ口にすると、自分を支えていた諸々が霧散してしまったように立っていることも辛くなった。
そのことを気取られないように、ありったけの気力を掻き集めて、耐える。
「ごめん、巽」
それ以上何が言えるだろう。
「まったく」
呆れた声。
当たり前か。
自嘲が洩れる。
おねがい。
どうか、そのまま。
「無茶ばかりして…そんなに私に心配を掛けたいんですか?」
そんな、言葉。
「でも、心配させてしまったのは私も同じようですね」
近付いてくる足音。
隣に、すぐ隣に巽の気配がある。
なのに。
振り向けない。
顔を見たらきっと、今必死に飲み下そうとしている言葉を口にしてしまいたくなってしまいそうで――こわい。
「都筑さん」
優しい声。
抗えないと、感じるのは勝手だと思うのに。
盗み見る、だけ。
言い訳して、横顔を、覗く。
一瞬、だった。
腕を掴まれ。
そのまま引き寄せられて。
抱擁されてココロが軋む。
「確かに、私では――貴方がそのココロの奥底に住まわせている痛みを理解することも、貴方が背負っている傷の深さを察することも出来ないのかもしれません」
「…………」
「でもね」
優しい声。
宥めるように紡がれた、言の葉がゆっくりと染み透って。
目尻から、透明な雫になって、あふれた。
「側にいて――その涙を拭うことくらいは出来ます」
整った指先がとめどなく溢れる都筑の涙を掬う。
「それでも、それが貴方を傷付けることになるなら……」
途切れた言葉。
都筑とパートナー解消を切り出した、あの日のことが脳裏を過ぎった。
自分を守るために都筑を傷付けたという、後悔。
その先の言葉を躊躇うのは自分の勝手に過ぎると巽は思う。
「貴方が昨日、願った通りにしましょう」
別れましょう、とは何故か今口に出来なかった。
「それを貴方が望むなら、全てをなかったことにしても構いません」
願うのは、ただ、都筑のシアワセだけ。
「でもね、もし…まだ私を必要として下さるのなら」
最後になるなら全身の細胞に刻もう。
この体温を。
甘い痛みを。
すべて。
「昨日、貴方が願った言葉の方を…なかったことにして下さいませんか?」
スーツに染みていく、この。
生温い――都筑の不器用な想いごと彼を抱き締めた。
「都筑さん」
呼ばれて、何かを返そうとして、躊躇う。
何かを口にしたら、きっと――巽の言葉に甘えてしまう。
そして、同じ事を何度となく繰り返すのだ。
迷惑を掛けて。
苦しめて。
傷付けて。
困らせて。
振り回して。
都合良く、泣きついてしまう。
だから。
「――…もう」
いいよ、巽。
「もう」
十分だよ。
そう、返したいのに。
たつみ
名前を呼んでしまいたい。
その優しさに甘えてしまいたい。
けれど。
「都筑さん」
許されるような、錯覚。
甘美な幻想だと目を伏せて。
「私は、貴方が思っているよりもずっと…ずっと、貴方を必要としているんです」
耳を塞ぎたくなるような誘惑の言葉に耐える。
「私はまだ、貴方が好きなままです」
卑怯だよ。
そんな、優しい言葉は。
「都筑さん」
巽の背中に腕を回し。
縋るように抱きついて、そのまま――泣くことしか出来なかった。
「ごめん」
解放してあげられなくて。
我儘で。
狡くて。
「ごめんなさい」
傷付けてばかりなのに。
「……好き」
偽れない。
抗えない。
拒めない。
弱い自分をどうか許してと、請う。
ごめん。
またこうして甘えてしまう。
「泣かせばかりですね、何だか」
困ったように微笑った表情。気配で解る。見えなくても――伝わる。
「無事で良かった」
本当に、良かった。
切実な言葉。
流れ込んでくる想いがひどく温かくて心地良い。
ココロに巣食っていた澱を洗い流す、巽の想いが都筑を癒す。
嗚咽がやみ、都筑が泣き疲れて眠りに落ちるまでその涙を受け止めて。
憔悴した都筑を伴い巽は現場を後にした。
一度自宅に戻り、自室で都筑を休ませ善後策を考える。
「この件はお蔵入りさせるしかなさそうですね」
首謀者である邑輝が手を引いた今、これ以上犯行が重ねられることもあるまい。
「黒崎君をどう誤魔化すか…まったく、何で私がこんなとことを考えなければならないんだか」
言葉の割に表情は柔らかい。
苦笑すると同時に思考が筋書きを考え始めている。
「これで私も共犯者ですね」
洗面所から取って来たタオルに水を含ませ軽く絞り、泣き腫らした都筑の瞼に乗せた。
「今回だけですよ、始末書を肩代わりするのは」
公私混同はしたくないところだが事情が事情だけにせざるを得ない。
「おやすみなさい」
部屋の電気を落として巽は自宅を後にする。
夕暮れ色の陽を浴びると、自覚以上に自分が気を張り詰めていたことに気付かされた。
苦笑混じりに息を吐いて召喚課へ向かう。
「私もまだまだ甘いですねぇ」
平穏の訪れを錯覚させる箱庭の世界で、呟きを攫った風がまた何処かへと去っていった。
to be continued......
[06]
-----------------
耳に柔らかな余韻を残す、優しい言葉が遠くで聞こえた。
また、涙が溢れてくる。
許されたいと願ってしまう、自分の弱さから必死に目を背ける。
「巽……」
何があったのかなんて、既に知られてしまっているのだろう。
それでも、彼はそのままの自分を受け止めようとしてくれている。
「許さないでよ」
こんなに醜く汚れている自分を。
迷惑を掛けることしか出来ない自分を。
見限って、振り向きもしないで、嫌ってくれたらいいのに。
「――…っ」
脳裏に、邑輝の言葉が浮かんで消える。
否定できない事実。
原罪を背負い、それ故に闇を抱え、そのことを誰に理解されることもなく隠し通し、傷を増やしながら生き続ける存在。
確かに、鏡写しのように似ていて。
だからこそ――解りたくなどないのに解ってしまった。
認めたくなどなかったのに。
指先が、床に転がったままのナイフを掠めた。
衝動的に握って、躊躇う。
脳裏に過ぎった巽の言葉。
裏切れない、願い。
自分は、死に逃げることも、出来ない。
これが贖いなのだろうかと考える。
また同じように傷付けて、迷惑を掛けて、困らせて、八つ当たりして。
相応しくなど、ないと。
彼の想いに自分は値しないと。
本心で、そう思うのに。
それでも――あの温もりへの恋しさが、枯れない、なんて。
勝手だ。
苦しいと思うのも、涙が零れるのも。
何もかも全てが勝手過ぎる。
巽は邑輝と決着をつけに行ったのだろう。
邑輝は、彼に全てを告げてしまうのだろうか。
そうしたら、巽は今度こそ自分を見限るに違いない。
「それでいいんだ…それで」
全部、壊れて終わってしまえばいい。
自嘲して願って。
一抹の不安に締め付けられる。
きっと、邑輝は巽自身を否定するように――呪詛めいた言葉を紡ぐのだろう。
自分から引き離すために。
ならばそれは――…
間接的に巽を傷付けるのと同じだ。
会うのが恐い。
躊躇が体を縛る。
自惚れかも知れない。
それでも、これ以上巽に迷惑を掛けたくないと願う。
パートナーの解消を宣告されたあの日、上手に吐けなかった嘘。
あの日の後悔に似た、躊躇が迷いを断ち切った。
巽は悪くなどないのに。
自分の所為で――彼が罪悪感を感じることなど何一つないのに。
だから、自分は行かなければ。
涙を拭く。
立ち上がって、深呼吸を、一つ。
長崎に向かう。恐らく、巽は邑輝のところにいる。
追跡用の遣い魔を放ってその後を追いかけた。
忌まわしいあの場所へと導かれ、躊躇を捩じ伏せ都筑は邸内へ侵入する。
霊体のまま二階へと急いだ。近付くだけで、緊張した空気が伝わってくる。
ここには使用人を置いていないのか、それとも邑輝の別宅に類する建物ではないのか――この騒ぎに誰かが気付きこの状況に慌てた様子もない。
壊れた壁から廊下に声が洩れていた。
邑輝は、やはり、言葉で人の心を蝕もうとしている。
「どうして、そんなに都筑さんを庇うのです? 罪悪感ですか?」
「そんなことを聞いてどうなさるんです?」
「失礼、ただの好奇心ですよ。もし罪悪感なら滑稽だと思いましてね。だってそうでしょう? 貴方がちゃんと気付いてあげないからいけないんですよ」
不敵に笑って邑輝は続ける。
「巽さん、貴方のその想いがどれほど深いおつもりなのかは判りませんが……」
「貴方には劣るとでも言いたそうですね」
「ほう、流石に察しがいいですね」
足が止まる。
しかし、巽の言葉は邑輝の言葉を切り捨てた。
「貴方のお好みに合わせて申し上げれば――何処まで行っても他人は他人です。完全に分かり合うことなんてそれこそ幻想に過ぎませんよ。どれだけ同じものを抱えていてもそれは同じこと」
「なるほど」
「確かに、貴方は都筑さんと共通する何かを抱えていらっしゃるのかもしれませんが」
空気が凍りつく、気配。
「それこそ滑稽ですよ、ドクター。私にしてみればね。生まれて半世紀にも満たない若造の戯言にしか聞こえません」
何故だろう。
「同じものを抱えているという事実に溺れるが故に、いたわることを忘れた貴方は同じものを抱えているという利点を御自身で台無しにしておいでだ」
何故なのだろう。
庇われているわけではないのに、巽が、守ろうとしてくれているのを感じた。
自惚れでも良い。
今は――ただ、巽の力になりたい。
札をとり、呪を唱えて術を放った。
衝撃。
場の均衡が一瞬にして崩れ、二人の視線は闖入者である都筑に向く。
「都筑さん」
巽は、素直に驚きをぶつけてきた。
「おやおや。お早いお目覚めですね」
邑輝は相変わらず冷たい毒を向けてくる。
「そこの、秘書殿のおかげだとしたら少しばかり妬けますが」
冗談とも本気ともつかない口振り。
「そんなに――その秘書殿が大切ですか? ならば貴方を解放して差し上げるために、先に彼を倒す必要がある」
負けるな。
自分に言い聞かせる。
「はっきり言っておくぜ、邑輝」
解ってしまった傷もあった。
伝わってきた痛みもあった。
確かに、邑輝の言葉はある意味では正しいのかもしれない。
けれど。
「俺は、お前のものになんかならない」
もう誰のものにもならない。誰のものにもなれない。なる資格がない。
「それは残念。でも――今更、戻る場所があるんですか?」
言葉の楔。
呑まれてはいけない。
「それでも…だよ」
「ならば余計、放っておくのは忍びないですね」
思考が麻痺しそうになるのを堪え。
「是が非でもお招きしたいところですが――」
視線を、都筑越しに巽に向けて。
「秘書殿が恐い顔で睨んでいらっしゃることですし、都筑さんに免じて今日は私が引きましょう」
さようなら都筑さん。
光を纏って姿を消す。
巽と二人だけ、この場所に残されてしまった。
まだ、気まずい。
振り返ることができない。
「――…ごめん」
謝罪の言葉を口にするのが精一杯で。
やっとでそれだけ口にすると、自分を支えていた諸々が霧散してしまったように立っていることも辛くなった。
そのことを気取られないように、ありったけの気力を掻き集めて、耐える。
「ごめん、巽」
それ以上何が言えるだろう。
「まったく」
呆れた声。
当たり前か。
自嘲が洩れる。
おねがい。
どうか、そのまま。
「無茶ばかりして…そんなに私に心配を掛けたいんですか?」
そんな、言葉。
「でも、心配させてしまったのは私も同じようですね」
近付いてくる足音。
隣に、すぐ隣に巽の気配がある。
なのに。
振り向けない。
顔を見たらきっと、今必死に飲み下そうとしている言葉を口にしてしまいたくなってしまいそうで――こわい。
「都筑さん」
優しい声。
抗えないと、感じるのは勝手だと思うのに。
盗み見る、だけ。
言い訳して、横顔を、覗く。
一瞬、だった。
腕を掴まれ。
そのまま引き寄せられて。
抱擁されてココロが軋む。
「確かに、私では――貴方がそのココロの奥底に住まわせている痛みを理解することも、貴方が背負っている傷の深さを察することも出来ないのかもしれません」
「…………」
「でもね」
優しい声。
宥めるように紡がれた、言の葉がゆっくりと染み透って。
目尻から、透明な雫になって、あふれた。
「側にいて――その涙を拭うことくらいは出来ます」
整った指先がとめどなく溢れる都筑の涙を掬う。
「それでも、それが貴方を傷付けることになるなら……」
途切れた言葉。
都筑とパートナー解消を切り出した、あの日のことが脳裏を過ぎった。
自分を守るために都筑を傷付けたという、後悔。
その先の言葉を躊躇うのは自分の勝手に過ぎると巽は思う。
「貴方が昨日、願った通りにしましょう」
別れましょう、とは何故か今口に出来なかった。
「それを貴方が望むなら、全てをなかったことにしても構いません」
願うのは、ただ、都筑のシアワセだけ。
「でもね、もし…まだ私を必要として下さるのなら」
最後になるなら全身の細胞に刻もう。
この体温を。
甘い痛みを。
すべて。
「昨日、貴方が願った言葉の方を…なかったことにして下さいませんか?」
スーツに染みていく、この。
生温い――都筑の不器用な想いごと彼を抱き締めた。
「都筑さん」
呼ばれて、何かを返そうとして、躊躇う。
何かを口にしたら、きっと――巽の言葉に甘えてしまう。
そして、同じ事を何度となく繰り返すのだ。
迷惑を掛けて。
苦しめて。
傷付けて。
困らせて。
振り回して。
都合良く、泣きついてしまう。
だから。
「――…もう」
いいよ、巽。
「もう」
十分だよ。
そう、返したいのに。
たつみ
名前を呼んでしまいたい。
その優しさに甘えてしまいたい。
けれど。
「都筑さん」
許されるような、錯覚。
甘美な幻想だと目を伏せて。
「私は、貴方が思っているよりもずっと…ずっと、貴方を必要としているんです」
耳を塞ぎたくなるような誘惑の言葉に耐える。
「私はまだ、貴方が好きなままです」
卑怯だよ。
そんな、優しい言葉は。
「都筑さん」
巽の背中に腕を回し。
縋るように抱きついて、そのまま――泣くことしか出来なかった。
「ごめん」
解放してあげられなくて。
我儘で。
狡くて。
「ごめんなさい」
傷付けてばかりなのに。
「……好き」
偽れない。
抗えない。
拒めない。
弱い自分をどうか許してと、請う。
ごめん。
またこうして甘えてしまう。
「泣かせばかりですね、何だか」
困ったように微笑った表情。気配で解る。見えなくても――伝わる。
「無事で良かった」
本当に、良かった。
切実な言葉。
流れ込んでくる想いがひどく温かくて心地良い。
ココロに巣食っていた澱を洗い流す、巽の想いが都筑を癒す。
嗚咽がやみ、都筑が泣き疲れて眠りに落ちるまでその涙を受け止めて。
憔悴した都筑を伴い巽は現場を後にした。
一度自宅に戻り、自室で都筑を休ませ善後策を考える。
「この件はお蔵入りさせるしかなさそうですね」
首謀者である邑輝が手を引いた今、これ以上犯行が重ねられることもあるまい。
「黒崎君をどう誤魔化すか…まったく、何で私がこんなとことを考えなければならないんだか」
言葉の割に表情は柔らかい。
苦笑すると同時に思考が筋書きを考え始めている。
「これで私も共犯者ですね」
洗面所から取って来たタオルに水を含ませ軽く絞り、泣き腫らした都筑の瞼に乗せた。
「今回だけですよ、始末書を肩代わりするのは」
公私混同はしたくないところだが事情が事情だけにせざるを得ない。
「おやすみなさい」
部屋の電気を落として巽は自宅を後にする。
夕暮れ色の陽を浴びると、自覚以上に自分が気を張り詰めていたことに気付かされた。
苦笑混じりに息を吐いて召喚課へ向かう。
「私もまだまだ甘いですねぇ」
平穏の訪れを錯覚させる箱庭の世界で、呟きを攫った風がまた何処かへと去っていった。
to be continued......
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